ほろ、ほろり
遠くに連れて行ってくれる
あの乗り物は
金が鳴るまで
僕を乗せてくれない
僕は何度も乗せてくれと嘆いた
金は鳴らなかった
金が鳴るように僕のために
星が月に向かって踊ってくれた
涙を浮かべて踊ってくれた
君が乗れるようにと
白い膜を脱ぎ捨てて
僕はいつの日か
暗い朝にひとり目覚めた
君が眠る部屋を飛び越えて
高台の上に走った
向こうで鳴る金の音が
微かに聞こえたからだ
僕は遠いところに行った
案内図が貼られた看板の下で
ひとりで泣いた
ほろ、ほろり
ほろり、ほろり、
ほろ、ほろり
一粒の涙をこわいものにあげた
こわいものは遠くに消えた
あの乗り物は
僕の横に腰をかけた