POEM 〜優しい時間〜

ひょんなことから始めちゃいました。詩や文を書くのが好き。気まぐれで書いています。気分は晴れ時々雨、そしてくもり。

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

それでも、青だった

立ち竦んだ下の空は青だった 隣の人には見えない青 沈黙の青が恐ろしく 触ってしまうと 解けてしまう青だった

芽を出して

どこかでこうしている間も 芽を出して 気づかれないように 春の丘を登っていると 彼はよく言う 私は彼に何を言っているのと 隣で尋ねる 芽を出し始めた頃は ささやかな営みに 誰も気づかないと言う ああ どうやって 水やりをすればいいのさ わからない私は …

われた言葉

無理に食べれば 壊れる気がした ああ、 あとその一口がもう食べられない あと、一口 美味しいなら美味しいと言ってよ そうしたら怖くないでしょう 目を瞑って叫んでみて 言葉でしかできないから 美味しい言葉を食べるために 美味しいスパイスを買ってきて

笑う花

さみしそうに花は笑う わたしのことは もう放っておいてと 泣きそうに花は笑う 冷たい風が心地いいのよと 震えながら花は笑う 日陰で踊るのもいいのよと 笑う花は何かを見ながら いつも ひとこと、 こうしているうちが 一番好きな場所に行ける気がするのと

潮風、そして自転車

あなたを迎えにいく 遠く離れた島にいるあなたに 数年前の手紙は読みましたか 夕日の沈む夜はひとり、泣きましたか どこへでも行けると思っていたあの頃に 今も戻れますか 旅を終えて帰ってきても 隣で荷造りをするあなたは 目を凝らしながら地図のない道を …

どこかの季節になって

歩みを止めた春を 夏が迎えにきて 手を繋ぐように秋が連れ去り 冬の音に涙を拭う 脱いだ衣が微かに重く 甘い口笛が待ち合わせ時間に響く わたしもどこかの季節になって あなたを迎えにいきたい 吹かれた前髪を切って 足元を見て今、 どこかの風に揺らされて …

色を勝手に塗るな

勝手に色を塗るな 何もできないからといって 勝手に色を塗るな 何かを与えた気になるだけだ 勝手に色を塗るな 震えた手で自分で塗る 勝手に色を塗るな 自分で染められる 勝手に色を塗るな 白いキャンパスを汚すなら 自分の色を塗りたぐれ 人の色を勝手に塗る…

自分にさよならを

さよなら、本日のコーヒー さよなら、食べかけのスパゲティ さよなら、失くした思い出 さよなら、縮んだセーター さよなら、深い谷 溢れたもの、さよなら 窓辺の写真、さよなら 白い光の中、さよなら

ほろ、ほろり

遠くに連れて行ってくれる あの乗り物は 金が鳴るまで 僕を乗せてくれない 僕は何度も乗せてくれと嘆いた 金は鳴らなかった 金が鳴るように僕のために 星が月に向かって踊ってくれた 涙を浮かべて踊ってくれた 君が乗れるようにと 白い膜を脱ぎ捨てて 僕はい…

キューブ

いい匂いがして 四角い時間に閉じ込めた 匂いは転がって 橋を渡った 本当のことを言えば壊れてしまう それだけを言って 渡った ひたむきに渡る姿に 立ちくらみがして ひとり、そこにしゃがんだ 君までもういってしまうのか 寂しさの箱に 僕はまんまと 閉じ込…