POEM 〜優しい時間〜

ひょんなことから始めちゃいました。詩や文を書くのが好き。気まぐれで書いています。気分は晴れ時々雨、そしてくもり。

2020-01-01から1年間の記事一覧

はじめての夜になって

はじめての夜になって あなたの頬に滴れる一雫 一緒に飲んだ 苦い味のスープが かなしい あなたの胸に張り付いている私は 甘い夢と共に彼方の方へ ああ、 こうやって 溢れていくんだねと あなたは抱きしめる はじめての夜は 冷えて 凍えて 涙さえも溢れず 瞼…

朝の光が見えぬ前に

朝の光が見えぬ前に リュックに 三年分の荷物を詰めておいた この前撮った写真 あの子の涙で滲んだハンカチ それから 遠くまで運んでくれる風の便り リュックの下から上まで ひとつひとつ 三年分の時間を詰め込んだ 本当のことを言えば リュックに詰めるか迷…

それでも、青だった

立ち竦んだ下の空は青だった 隣の人には見えない青 沈黙の青が恐ろしく 触ってしまうと 解けてしまう青だった

芽を出して

どこかでこうしている間も 芽を出して 気づかれないように 春の丘を登っていると 彼はよく言う 私は彼に何を言っているのと 隣で尋ねる 芽を出し始めた頃は ささやかな営みに 誰も気づかないと言う ああ どうやって 水やりをすればいいのさ わからない私は …

われた言葉

無理に食べれば 壊れる気がした ああ、 あとその一口がもう食べられない あと、一口 美味しいなら美味しいと言ってよ そうしたら怖くないでしょう 目を瞑って叫んでみて 言葉でしかできないから 美味しい言葉を食べるために 美味しいスパイスを買ってきて

笑う花

さみしそうに花は笑う わたしのことは もう放っておいてと 泣きそうに花は笑う 冷たい風が心地いいのよと 震えながら花は笑う 日陰で踊るのもいいのよと 笑う花は何かを見ながら いつも ひとこと、 こうしているうちが 一番好きな場所に行ける気がするのと

潮風、そして自転車

あなたを迎えにいく 遠く離れた島にいるあなたに 数年前の手紙は読みましたか 夕日の沈む夜はひとり、泣きましたか どこへでも行けると思っていたあの頃に 今も戻れますか 旅を終えて帰ってきても 隣で荷造りをするあなたは 目を凝らしながら地図のない道を …

どこかの季節になって

歩みを止めた春を 夏が迎えにきて 手を繋ぐように秋が連れ去り 冬の音に涙を拭う 脱いだ衣が微かに重く 甘い口笛が待ち合わせ時間に響く わたしもどこかの季節になって あなたを迎えにいきたい 吹かれた前髪を切って 足元を見て今、 どこかの風に揺らされて …

色を勝手に塗るな

勝手に色を塗るな 何もできないからといって 勝手に色を塗るな 何かを与えた気になるだけだ 勝手に色を塗るな 震えた手で自分で塗る 勝手に色を塗るな 自分で染められる 勝手に色を塗るな 白いキャンパスを汚すなら 自分の色を塗りたぐれ 人の色を勝手に塗る…

自分にさよならを

さよなら、本日のコーヒー さよなら、食べかけのスパゲティ さよなら、失くした思い出 さよなら、縮んだセーター さよなら、深い谷 溢れたもの、さよなら 窓辺の写真、さよなら 白い光の中、さよなら

ほろ、ほろり

遠くに連れて行ってくれる あの乗り物は 金が鳴るまで 僕を乗せてくれない 僕は何度も乗せてくれと嘆いた 金は鳴らなかった 金が鳴るように僕のために 星が月に向かって踊ってくれた 涙を浮かべて踊ってくれた 君が乗れるようにと 白い膜を脱ぎ捨てて 僕はい…

キューブ

いい匂いがして 四角い時間に閉じ込めた 匂いは転がって 橋を渡った 本当のことを言えば壊れてしまう それだけを言って 渡った ひたむきに渡る姿に 立ちくらみがして ひとり、そこにしゃがんだ 君までもういってしまうのか 寂しさの箱に 僕はまんまと 閉じ込…

ホワイトチョコレート

甘い涙を拭ったら その上着をそこにかけて 古い音楽を流しましょう 誰も知らないこの部屋で 時間が遡るように あなたの温もりが溢れますように ほっとして あなたはそのうち 目が重くなるでしょうね うつらうつらと 同じ言葉を言いながら 会えなかった日のこ…

どこかへ飛ぶ白

ひたすらに音を奏で 時間は驚きながらも 穏やかに響く 一羽の小鳥が飛んできて 時間は息を吐きながらも 手を伸ばす 月へと続く階段を登りながら 時間は希望に音を合わせて 軽やかに鳴り出す 羽の柔らかさに触れながら 時間は花のつぼみに胸を躍らす 昼間に吸…

夜を掬う

夜を掬う その白い手で 夜を掬う 下から上に 上から下へと 一時は泡となって消えた夜を 両手を広げて したたかに掬う 慌てた声に静寂が押し寄せ 幾度も迫った ざわめきに光が差し込んで あなたは夜を掬う

今夜、月が生まれる

幻惑状態になった 目が眩むほどだ 歩けない私は 呆然と立ち止まって 隣の丘を見た あぁ、今夜も月が生まれるんだな そう一言呟いて 飛行船に乗って私は家に帰る

あなたにあるもの

あなたの中にあるものを 探して探してみつけて 掘り下げるほどに 涙が頬につたう あなたの中にあるものは 誰のものでもなく 昨日のあなたのものでもなく ただ遠い過去で待っている 今のあなたなのです 私は過去のあなたを 迎えにいくことがなかなか出来ませ…

誰かに会えるなら

誰かに会えるあの森で 私はひとり、 鍋に細かく刻んだ野菜を 煮込んでスープを作っています でも、周りには誰もいません それでもなめらかな 甘いスープを日が暮れるまで 煮込んでいます 時々、森が暗闇の中に包まれて カラスは鳴き、雨がざぁざぁと降り始め…

飛び降りる

何度も答えて 何度も震えた夢を あなたは駆け足で自分の向こうへと 飛び降りる そこには誰もいない世界が 待っていても 白い花を抱いて 灰色の砂浜へ せーので、ジャンプ きっと夢が見れると思って 大きく、ジャンプ 遅くても早くても しなやかでも ごつごつ…

声に出すだけなら

声に出すだけなら簡単なんだ だってそれを美しく考えなくていいのだから いつもそうやって 声に出してきた自分や、あなた、そして この地球のどこかで眠る小さなものたちは みんな声を出しているけれど したいことはそれじゃないって 僕は知っている きっと…

わたし、泳いでいます

わたし、泳いでいます 上から見上げると ただ水しぶきが頬に当たるのを 耐えているように見えるかもしれません わたし、泳いでいます 一緒に泳ぐと 水を飲み込んで 波にさらわれながら もがいているように思えるかもしれません わたし、泳いでいます 隣にい…

いつだって

いつだって 走れる いつだって 歩ける いつだって 踊れる いつだって 悲しめる 君だって 走れる 君だから 走れる 走れないときは 歩ける 歩けないときは 踊れる 踊れないときは 悲しめる 全てのこと 全ての昨日 全ての明日が 全てのきみ きみの全ては いつだ…

きらきら

きらきら光ることってある? 隣の道がきらきら光ったことってある? 朝の光が眩しかったことじゃないよ 隣の道が きらきら光ったことを聞いているんだよ それがいつだったのか どんな色だったのか 教えてほしいな きらきらしてたこと 君から 聞きたいんだ

水の中でぼくは服を脱ぐ

水の中で ぼくは服を脱ぐ 汚れた服を着ていたわけでも この服がぼくを汚したわけでもない 淡い色の服は 泡と共に 下に沈んで なめらかな揺るぎない坂を下る そこを深く辿ると 重い匂いがして なんだか僕は眠くなる そのあと僕は まあるくなって 服と共に ぐ…

それで生きるということ

花を摘んだ日 本を積んだ日 雨が降って泣いた日 思い出し笑いをして生きることにした日 どんな1日もあなたの日 全部全部 飛び越えるためのあなたの日 優しさに慣れた日 どんな1日もあなたの日 それが言葉にならなくても それでいい 少し、少し待ってみようよ

紺碧の君

紺碧の君を思い出す 暗い夜へ飛び出して行った君のことを マフラーはいらないのか、 手袋は持ったか、 時計は持ったか、 寂しくはないのか、 寂しくなったら戻ってこい、 紺碧の君は 何も言わずに ひとりで飛び出した 紺碧の君は 自分の青さを知っている ぼ…

弾けた音

弾けた 樹々の花のもとへ 弾けた 胸の高鳴りをおさえた あの子のそばへ 弾けた 夜に泣くあの子の部屋に 弾けて震えた 泣き出しそうな空へ向かう 鳥の巣へ 地図を手にした旅人は 弾けた音をそっと 与えて隣町へと行く どうぞ、あなたへと 弱い音色が 今日も静…

あなたが未来なら、わたしは過去

あなたが未来なら わたしは過去 振り返れば何度も味わってきた思いを まだ見ぬ1日へと乗せて 隣町へと飛び立たせてくれる わたしが過去なら あなたは未来 二人で見た偶然の夢を 映画館で流すかのように あなたは隣町、異国へと連れて行ってくれる

あなたの行く路を

あなたの行く路は 薄らと雪が積もったような 冬の路ですかと わたしが尋ねたら あなたは いいえ、わたしの行く路は 野原に咲く花をいつか花束にして 二人の愛しているひと同士が その花束を送り合えるような路ですと 答えました それからというもの あなたと…